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後編になります。
あまり時間がないので、前後編としました。
「辛いー!?」
今日、何人目かの客が悲鳴をあげた。
「あ、あれれ…」
悲鳴をあげた客は、慌ててルーリが持ってきた水を飲み干し咳き込んでいた。
「う、うーん…」
流石に、その情景を見ていると、シャルルは少し後悔し始めていた。
七つの壷の中に一つだけ潜んでいる激辛の壷。
無論、ただ辛いだけではなく、自信をもってつけている味付けではある。
だが、辛いものが苦手な人にとっては、それは苦痛でしかないのではないか。
「これはちょっと厳しいですね…」
リシーハットによく来てくれているシグレも、紅く染まったパンを見て、
やや引き攣った表情を浮かべていた。
「ごめんね、アタシ配慮が欠けていたかもしれない」
シャルの故郷は長閑な田園地帯故、普段から刺激というものが不足していた。
だから、料理に人を驚かすような仕組みとして激辛などを仕込むのも、
一つの娯楽として行われていたのだ。
しかし、お金を貰って営業している店で、苦手かもしれないものを出す、という行為自体、
よく考えれば、あまりといえばあんまりだったのかもしれない。
「…うん、無理して食べなくてもいいよ。よし、レッドホットを引いた人には、
アイスケーキの券をあげる。当たりって事で」
アイスケーキは、2月のメニューの試作として作っていたものだ。
特別なチーズケーキを氷で更に冷やし固めた、不思議な食感のケーキ。
それを、先行で出す事にした。
「いいんですか?お店の予算からすると大変なんじゃ」
「ルーりん、アタシはね、お客様を裏切るような事は絶対にしたくないんだ。
例えお祭りであっても、お客様に喜んでもらう事がアタシの全てだから」
だから、例えお祭りであっても、全てのお客様に喜んでもらうための努力は惜しまない。
そう決めていた。
そうして、一日目の祭りは過ぎて行った。